【朝の小1の壁とは】各自治体が取り組む「小学生の朝の居場所づくり」

【朝の小1の壁とは】各自治体が取り組む「小学生の朝の居場所づくり」

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 「小1の壁」という言葉を、聞いたことはありますか? 

 これは、こどもたちが小学校に入学したときに家庭が直面しやすい様々な困難や課題を表すものとして、最近広く知られてきた言葉です。「小1の壁」としては「夕方〜夜間や長期休暇の預け先不足」が話題になることが多く、ニュースや調査報告でも繰り返し取り上げられてきました。

 しかし、その陰に隠れてあまり語られてこなかった課題があります。それが「朝の小1の壁」です。

 小学校の登校可能時刻と、保護者が出勤のために家を出る時間は必ずしも一致していません。多くの学校では、こどもたちが校門を通れるのは8時15分頃以降とされている一方で、保護者は8時前に家を出発しなければならないという場合が少なくありません。この“時間のねじれ”が、こども一人で留守番させなければならないリスクや、保護者の就労継続を難しくする要因となっています。

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 保育園時代は朝7時台から夜7時頃まで安心して預けられたのに、小学校に上がった途端に「朝の時間帯」が大きな空白として現れてしまう…。これが「朝の小1の壁」の実態です。

 本コラムではまず「小1の壁」について、そして見落とされがちである「朝の小1の壁」について、さらには「朝の小1の壁」を解消するために取り組まれている「小学生の朝の居場所作り」について詳しく解説していきます。

1.そもそも「小1の壁」って何?

 「小1の壁」とは、こどもたちが小学校に進学することによって生じる“急な環境変化”によって、家庭が直面する様々な課題の総称です。例えば以下のような環境変化によって生じる心身の疲弊や困り感が、「小1の壁」として挙げられます。

《学習面の変化》
 45分間座って授業を座って受けることに慣れる必要があります。また、毎日宿題が出るようになり、学習習慣を身につける必要があり、保育園幼稚園時代とのギャップを感じやすいと言われています。

《人間関係の変化》
 新しい友達や担任の先生と信頼関係を構築していく必要があります。新たな人間関係は刺激的で学びや喜びを得られるものの可能性が高いですが、大きなストレスを感じてしまう子もいます。

《預かり時間の変化》
 今回取り上げる「朝の小1の壁」問題にも大きく関わってくるのが、「預け先の仕組みが大きく変わる」という変化です。

 保育園は共働き家庭を前提に制度設計されており、朝から夕方まで長時間にわたりこどもたちを受け入れてくれます。しかし小学校は、あくまで教育の場であって保育の場ではないため、授業が終わればこどもたちは基本的にまっすぐ下校することになります。

 学校の授業は大体午後2〜3時に終わる( 入学直後は給食が始まらず、もっと早い時間に帰宅する日が続く )ため、フルタイムで働く保護者は学童保育所の入所を検討し、申し込みをする必要があります。

 しかし最近は共働き世帯の増加にともなって、学童保育所は必ず利用できる場所ではなくなってきています。仮に入所が決定したとしても、狭い空間で大人数が過ごす集団生活にこどもがストレスを感じてしまい、学童に通えなくなってしまうという事例も頻発しています。
 
 仮に学童を利用できない、もしくはこどもが「学童に行きたくない」と言い出した場合、保護者は勤務時間を調整しなければならなくなります。仕事と子育ての両立が難しくなるという点で、「預かり時間の変化」はこどもだけでなく保護者にとっても大きな壁となり得るのです。

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2. 学童保育所と「小1の壁」

 学童保育所(放課後児童クラブ)は、まさに「小1の壁」( 特に「預かり時間の変化」という部分の課題 )を緩和するための仕組みです。
 放課後から夕方、場合によっては夜間まで、こどもたちが安全かつ安心できる居場所を提供し、保護者の就労継続を支えています。夏休みなどの長期休暇中には、朝の8:00頃からこどもたちを受け入れるところも多く、家庭にとっては大きな支えとなる重要な社会インフラであるといえるでしょう。

 学童保育所では遊びや生活を中心にしながら、こども同士の交流を育んでおり、単なる託児だけでなくこどもたちの社会性を伸ばす場所としての機能を果たしています。家庭でも学校でもない「第三の場所」としての意義も大きいといえます。

 しかしながら、学童保育所が「小1の壁」を全て緩和できているわけではなく、制約・限界があります

例えば、
• 朝の時間帯は基本的に開所していないため、カバーしきれない時間がある。
• 定員超過による「学童待機児童」が発生している地域があり、希望すれば誰でも利用できるわけではない。
• 支援員不足や施設不足が深刻化しており、学童保育所の安全かつ快適な環境づくりが困難になっている施設もある。
というような問題が挙げられます。

3. 「朝の小1の壁」とは?

 上述のとおり、多くの小学校では、こどもたちが登校できる時間が明確に決められています。たとえば「校門が開くのは8時15分以降」や「教室に入れるのは8時25分から」といった具合です。これはこどもたちの安全確保や学校運営の効率化、先生たちの負担軽減などが主な理由とされており仕方のないことともいえるのですが、保護者の出勤時間や要望とは必ずしも一致しません。

 特に大都市圏では通勤時間が長く、7時半や8時前には家を出なければならない家庭も多くあります。そうなると「こどもを学校に見送れない(連れていけない)ため、こどもが朝から留守番をし、鍵を閉めて学校へ向かってもらわなければならない」という状況が生まれてしまいます。

 放課後や遅い時間帯 ( 19:00以降 ) の居場所不足と比べ、「朝の小1の壁」は「家庭の努力で解決すべきもの」として軽視されてきたといえます。祖父母や親戚の協力、近隣の方々との助け合いで解決することもありますが、それはすべての家庭に当てはまるわけではありません。少子化が進み、地域のつながりが希薄化する現代において、この課題はむしろ大きくなっているのです。

4. 朝の居場所づくりとは?

 こうした「朝の小1の壁」問題を解消するため、昨今各自治体によって取り組まれ始めているのが「朝の居場所づくり」です。これは学校の中に入れるまでの朝の時間帯に、小学生が家以外に過ごせる場所を増やす試みです。
 今回はそれらの試みをいくつかご紹介していきます。

◎学校を活用する取り組み

 いくつかの自治体では、学校の空き教室や図書室を利用して登校前の受け入れを行っています。始業の45分から60分前から学校を解放して読書や学習、静かな遊びができる環境を整えることで、保護者とこどもたちが安心して過ごせるよう工夫されています。
 また、それらの見守りは学校の教員ではなく地域の人材やPTAの保護者、その他外部の委託スタッフが担うことで、先生方の負担を軽減しながらこどもの安全を確保しています。

◎学童保育所の早朝受け入れサービス

 通常は放課後の時間からこどもたちの受け入れを開始する学童保育所ですが、需要に応じて登校前の時間も開所するというサービスが始まっています。多くの場合オプションサービスとして位置づけられているため、値段的な負担は生じるものの、いつも通っている学童で朝の時間を過ごすことができ、そのまま複数人がまとまって学校へ登校できる安心感は非常に価値が高いものであるといわれています。

◎地域団体・NPOによる活動

 上記2つと比較するとまだまだ実施されているところは少ないものの、地域のNPO団体やボランティア団体、有志で集まった保護者などが公共施設や自宅を活用して「朝の居場所」を提供する事例もあります。地域の交流が活性化するという点で非常に魅力的な活動といえます。

 友達や地域の大人たちとの交流が図ることができるこれらの朝の居場所は、こどもたちにとって孤独を感じることなく、安心して一日を始められる大切な居場所になります。また、気持ちを整えて授業に臨むことができるという教育的効果も期待されています。

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5. 朝の居場所づくりの課題

 これまで述べてきたように、朝の居場所作りは非常に有意義なもの。しかし、まだまだ全国的に普及しているとはいえないのが現状です。その理由としては、以下のような重大な課題が残されているためです。

●人材確保が困難であること
 早朝からこどもたちを受け入れる居場所には、大人の見守りが必要不可欠です。しかし学童指導員の人手不足や学校教員の負担はすでに深刻であり、早朝シフトを新たに設ける余裕は限られています。そのため保護者や地域ボランティアの活用が重要視されていますが、安定的な担い手を確保することはなかなか容易ではありません。

●コストがかかること
 朝の居場所づくりを継続的に実施するには、どうしても運営費や人件費がかかってきます。自治体が全額を負担するのか、学校やPTAなどの資金を活用するのか、利用者が一部を負担するのか、あるいは国の補助を活用するのか…。持続可能な財源の設計は避けて通ることができない重要な課題です。

●ニーズの多様性
 家庭によって朝の居場所が必要な曜日や時間は異なります。毎日利用する家庭もあれば、週に数回だけという家庭もあります。また、居場所に希望することも「単なる見守り」なのか「学習のサポート」なのか「遊びの見守り」なのか、というニーズの違いもあります。
 そのため固定的な仕組みでは利用しづらく、柔軟性を持たせることが求められますが、いつでも利用可能でどんなニーズにも応えられるような居場所を運営し続けることは、上記の通りコストがかかります。

●こどもたちの心身の健康を保つこと
 朝から夕方まで長時間、家以外の場所で過ごすことは、こどもたちにとって心身への負担となるリスクがあります。慣れない場所やストレスを感じる場所だと、朝の居場所で過ごす時間が苦痛に感じてしまう可能性があるのです。保護者にとって安心で便利な仕組みでも、実際に利用するこどもたちの気持ちが置き去りになってはいけません。こどもたちにとっても安心感と居心地のよさを両立させる居場所づくりは簡単なことではなく、工夫と努力が求められます。

まとめ

 これまで「小1の壁」といえば放課後や長期休みの課題が注目されてきました。しかし、実際には「朝の小1の壁」も同じように大きな問題として存在しています。今後は放課後だけでなく、朝の時間帯にも目を向け、学校・学童保育所・地域が連携しながら社会全体で支える仕組みをつくることが求められていくでしょう。

 朝の居場所作りに取り組んでいくことは、こどもたちの健やかな成長し、保護者が安心して働き続けられる社会を実現するための大きな一歩となるはずです。

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