【現場で使える!】こどもの「嘘」にどう向き合う?信頼関係を深める関わり方について

【現場で使える!】こどもの「嘘」にどう向き合う?信頼関係を深める関わり方について

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 学童保育の現場で働いていると、嘘やごまかしの言葉を口にするこどもに出会うことは珍しくありません。
「嘘をつくなんていけない」や「ごまかすなんてズルい子だ」と感じてしまうこともあると思いますが、実はこどもたちの嘘やごまかしには、私たち大人が想像する以上に深い背景が隠れていることがあります。
 嘘は全て「悪いこと」として捉えて叱りつける前に、「なぜその言葉を口にしたのか」という背景に目を向けることが、こどもたちとの信頼関係を深める大切な第一歩です。

 本コラムでは、学童現場においてこどもたちが嘘をついたりごまかしたりする理由や、発達段階や心理的背景に基づいた対応のポイントを解説していきます。


1. こどもの嘘は、心のSOS?

 こどもの噓を理解するためには、まず「噓をついた理由」を考えることが大切です。多くの場合、それは「悪意」からではなく、自分を守るために心から発せられているSOS(サイン)だからです。心のSOSには以下のようなものが含まれます。

① 怒られたくない・嫌われたくないという自己防衛反応

 何か悪いことをしてしまい、大人から咎められたり質問をされたりした時に「自分はやっていない」と言い張る子の多くは、自分の行為が悪いと理解しています。それでも「怒られたくない」や「先生に嫌われたくない」という思いが先に立ち、真実を隠してしまうのです。

 たとえば、友達の消しゴムをとってしまった子が、「僕はとっていない。知らないよ」と言い張るとき。心の中では「まずいことをした」とわかっていながらも、「正直に言ったらもう友達に仲良くしてもらえない」や「先生に怒られてしまう」と不安を感じていることがあります。
 このような場面で強く叱責してしまうと「正直に言うと怖いことが起きる(=良いことがない)」と学んでしまい、ますます心を閉ざしてしまいます。

② 「できる自分」でいたいという願い

「宿題はもうやったよ」と言いながら実はやっていない。
「お手伝いしておいたよ」と言いつつ何もしていない。

 こうした嘘をつくこどもたちの背景には、「できる子でありたい」や「認められたい」という願い・承認欲求が隠れている場合もあります。

 大人の期待に応えたい気持ちは、誰にでもあるもの。特に学童期のこどもにとって、「先生に褒められたい」や「がんばってる自分を見てほしい」という思いはとても強いものです。そういった気持ちを大人にアピールするために嘘をつくという形をとってしまうのは、その子なりの不器用な自己表現ともいえるのです。

 嘘をついた理由には、上記のような心のSOS(防御反応や願い)以外に、空想と現実の混同が原因である可能性もあります。たとえば「昨日ね、ドラゴンを見たよ」というような何かの見間違いや勘違いによって生じてしまった実際とは異なる話も、本人は本気で信じていることがあります。
 また、夢と現実の区別がついていなかったり、時系列が滅茶苦茶になってしまったり適切な言葉を選べなかったりすることで突拍子もない話を作り出してしまい、「あの子は嘘つきだ」と思われてしまう場合もあります。
 このような発達段階のこどもの場合は、「嘘をつく=悪いこと」ではなく、豊かな想像力の表れとして受け止める必要があります。

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2. 嘘をついている子に対する対応

 こどもが嘘をついていると分かった時、まずは「なぜ嘘をついたの?」と問い詰めるのではなく、「なぜ、そのように言わざるを得なかったのか」という、嘘をついた背景に寄り添う姿勢が重要になってきます。

① その子の「心の安全」を守るために

 多くのこどもたちは、「正直に言うこと」よりも「心の平穏を守ること」を優先します。つまり、素直な想いや言葉を言ったら相手に怒られたりガッカリされたりすると感じた場合、自分の安心安全を守るために自然と嘘をつく方を選んでしまうのです。

「怒られないように」
「からかわれないように」
「居場所を失わないように」

嘘の裏には、そのような心の防衛反応があります。

 こどもたちが嘘をつかずに安心して本音を話せるようになるためには、
「言いづらかったよね」
「話してくれてありがとう」

といった、正直な思いを受け止める大人の姿勢が欠かせません。

② 「嘘」そのものより、気持ちに注目する

 「宿題やったって言ったのに、やってないじゃない!」と叱る代わりに、「やってないって言いづらかったんだね。どうして言えなかったのかな?」と寄り添いながら、本音を言語化する関わりが有効です。

 このように接しているうちに、こどもは「この人は自分の気持ちをわかろうとしてくれる」と感じ、安心し、少しずつ本音を話せるようになります。嘘を「正す」ことより「理解する」ことを優先することが信頼関係の土台になります。

 嘘をついたことを過剰に叱ったとしても、それはあくまで対処療法でしかなく、根本的な解決にはなりませんので注意が必要です。
ただし、大人から素直な気持ちを伝えることは大切なこと。「嘘をつかれたように感じて悲しかったな」や「素直に教えてくれて嬉しかったよ」などと丁寧にお話をしていくのも一つの手段です。


3. 「正直に言える関係」を育むには?

 こどもたちが安心して本音を話せるようになるためには、日々の丁寧な関わりの積み重ねが欠かせません。嘘をつく・つかないという行動の判断基準は、その瞬間だけで決まるものではなく、普段の関わりの中で培われる信頼関係に大きく影響するからです。
 今回は、正直に気持ちを言える関係を育むためのポイントを2つご紹介します。

① 「失敗しても大丈夫」という安心感を大切にする!

 こどもたちが失敗をしてしまったときに「大丈夫だよ。この後どうしようか」や「挑戦したことが素晴らしいよ」、「正直に教えてくれてありがとう」などといった声かけを日常的に行っていくことで、失敗が「怒られる怖いもの」ではなく「大切な学び」だと感じられるようになります。
 そうすることで、何かトラブルが起きたときにも「嘘をつかずに、正直に話しても大丈夫」と思えるようになります。

② 大人が「正直な姿」を見せる!

 こどもたちは、私たち大人の姿をよく見ています。学童のスタッフは一緒に過ごす時間が長いこともあり、良くも悪くも手本としやすい存在です。だからこそ、大人が自分のミスや勘違いを素直に認める姿を見せていくことで、「失敗をすることや正直でいることは、恥ずかしいことじゃない」と学ぶことができます。

 そして、大人がこどもに対して間違ったことを言ってしまったり、やってしまったりしたときには、しっかり謝罪をすることが大切です。大人がこどもである自分に対しても真摯に素直に向き合ってくれていると感じられる環境は、学童における心理的安全性を育むことに大きく影響し、「悪いことをしたら誤魔化す」という方法を選ばないコミュニケーションを取れるようになっていきます。

4. 学童全体としての「嘘」への対応

 学童保育所では、個々の大人の関わりだけでなく、チームでの一貫した対応が欠かせません。あるスタッフが「嘘を許す」姿勢をとっても、別のスタッフが「嘘はダメ」と厳しく叱れば、こどもは混乱してしまうからです。
 また、ある子は嘘をつかずに正直であることを目指していながら、ある子は嘘を良しとして多用している…という環境はどうしても衝突が起こりやすくなるため、学童全体で「本音を言い合える雰囲気作り」を心がけることが重要になってきます。

 ただし、こどもの「嘘をゼロにすること」が目標ではありません。むしろ「嘘をついてしまうことがある自分も受け入れられる」と感じられる環境をつくることが、支援者の役割です。こどもは、信頼できる大人に出会うたびに、「自分を偽らなくていいんだ」と少しずつ学んでいきます。


◎まとめ

 こどもの嘘は、こどもたちの心から発せられる大切なサインです。嘘だからといって闇雲に叱る前に、「この子は一体なにを守りたかったのだろう」や「どんな気持ちを隠しているのだろう」と考えてみること。その視点があるだけで、こどもとの関係は大きく変わります。

「怒られるのが怖かった」
「本当は認めてほしかった」
「できない自分を見せたくなかった」

そうした本音を受け止め、「話してくれてありがとう」と返す。それが、こどもとの信頼関係を深める最も確実な方法です。

 全ての嘘を「悪」として正すのではなく、背景を知ることで見えてくる「本当の気持ち」に耳を傾けるコミュニケーションの積み重ねによって、学童保育所が多くのこどもたちにとって「ここでなら本音で話せる」と感じられる安心で安全な居場所になっていきます。

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