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学習障害(LD)とは?原因や特徴、診断方法や支援の仕方までわかりやすく解説します
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1. 学習障害(LD)とは?
学習障害(LD)とは、全般的な知的発達に遅れがないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」など、特定の学習能力に著しい困難を示す発達障害の一つです。
発達障害の枠組みの中で、自閉スペクトラム症やADHDとは異なる特徴を持ちます。国際的にはDSM-5(限局性学習障害)やICD-10(学力の特異的発達障害)で定義され、日本でも文部科学省や発達障害者支援法により定義・支援体制が整えられています。
2. 学習障害と発達障害の違い
発達障害は多様な特性を持つ障害として知られていますが、なかでも「学習障害(LD)」「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動性障害(ADHD)」の違いや重なりは、現場や家庭で誤解されやすいテーマです。それぞれの特徴と共通点、そして理解するうえでの注意点について解説します。
自閉スペクトラム症やADHDと学習障害の違い
LD(学習障害)は「読む・書く・計算」など特定の学習分野で困難を示し、知的遅れはありません。一方、ASD(自閉スペクトラム症)は主に社会的コミュニケーションの困難や行動のこだわり、感覚の特異性が特徴で、ADHDは注意力の持続や多動性・衝動性が目立ちます。つまり、困難の現れ方や支援の観点が大きく異なります。
自閉スペクトラム症やADHDと学習障害の共通点
これら3つの発達障害は、生まれつき脳の機能に由来し、幼児期から症状が現れやすい点で共通します。また、それぞれ特性が重複したり、同時に複数が併存する(例えばLDとADHDを併せ持つ)場合も多いのが実情です。それぞれ個別性が強いため、日常や学校生活で求められる支援や配慮も一人一人異なります。
学習障害の誤解されやすいポイント
学習障害は知的障害と誤認されたり、ASDやADHDと混同されやすいですが、あくまで主症状の違いが明確です。また、しつけや育て方が原因と誤解されることも多いのですが、これらは脳の特性によるもので、家庭環境や本人の努力不足ではありません。周囲の理解不足が二次的な困難を生むことも多いため、正確な知識が不可欠です。
3. 学習障害(LD)の本当の原因
学習障害(LD)の原因は、先天的な脳機能障害に起因するとされ、2025年の最新研究では、言語や数処理に関わる脳の特定領域の機能的・構造的な違いが明らかになってきました。脳内の神経伝達物質のバランス異常も影響しています。
また遺伝的要素の指摘もありますが、しつけや育て方の問題ではなく、あくまで脳の生物学的特性によるものであり、努力不足と結び付けるのは誤解です。こうした科学的知見を理解することが、正しい支援と偏見の解消につながります。
4. 年齢別にみる学習障害(LD)の症状
幼児期(2〜5歳)
幼児期の学習障害(LD)は、言葉の習得が遅れたり、文字や音への関心が薄いことが多く見られます。指示を理解しにくかったり、手先が不器用で工作などが苦手な場合もあります。この時期は個人差も大きく、周囲は焦らず成長を見守りながら、専門家への相談も視野に入れるとよいでしょう。
学齢期(6歳〜12歳)
学齢期になると、読み書きや計算で困難が顕著になります。例えば、文字を正確に読めなかったり、数字の位置がずれるなどの症状が現れ、授業についていけないこともあります。学校生活に適応するために、子どものつまずきを早期に見つけて、適切な支援や配慮を受けられる環境づくりが重要です。
思春期(13歳〜18歳)
思春期は学習内容が複雑になり、特定科目での苦手意識が強くなる傾向があります。例えば英単語や図形問題で困難を感じることが多く、自己肯定感の低下や不登校につながることもあります。本人の特性に合わせた学習支援や心理的サポートを充実させることが大切です。
5. 学習障害(LD)のタイプと特徴
学習障害(LD)は、知的発達に遅れがないにもかかわらず、特定の学習領域で困難を抱える障害です。主に「読字障害(ディスレクシア)」「書字障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュリア)」の3つのタイプに分かれます。これらのタイプは単独で現れる場合、また複数が重なっていることもあります。下記で詳しく見てみましょう。
読字障害(ディスレクシア)
読字障害(ディスレクシア)は、知的発達に遅れがないのに、文字の読み書きに困難がある学習障害の代表的なタイプです。特徴として、文字を一つずつ注意深く読んだり、文字や単語を飛ばしてしまうことがあります。音と文字の結びつきがうまくいかず、文字がにじんだり、左右反転して見えることもあります。読むのに非常に時間がかかり、読む行為自体が疲れやすい点も特徴です。
書字障害(ディスグラフィア)
書字障害(ディスグラフィア)は、文字を書くことが困難になる障害です。文字の形を正確に書けなかったり、文字の位置や字間が不揃いになることがあります。鏡文字を書いたり、漢字の部首の位置を間違えるなどの症状も見られます。手先の動きや力加減に問題があることも多く、ノートの枠からはみ出してしまうこともあります。書くことに時間がかかり、疲れやすいことが特徴です。
算数障害(ディスカリキュリア)など
算数障害(ディスカリキュリア)は、計算や数の理解が苦手な障害です。具体的には、数字の認識の遅れや計算のミス、量や順序の把握が難しいことがあります。暗算や数の概念が理解しにくく、計算問題への苦手意識や不安感が強いことも特徴です。計算結果をすぐに忘れてしまったり、数字の並びを間違える傾向も見られ、日常生活でも計算に関わる場面で困難が生じやすいです。
6. 学習障害の診断基準と診断方法
学習障害(LD)の診断は、アメリカ精神医学会のDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 第5版)に基づき行われます。
主な基準は、学習や学業的技能に6か月以上困難が続き、その困難が知的能力や適切な教育環境では説明できないことです。
DSM-5では、読字障害、書字障害、算数障害のいずれかまたは複数が認められます。診断の過程では、問診や学業成績、知能検査(WISCなど)、心理教育的評価が中心に行われ、他の障害や疾患が原因でないことを確認します。加えて、視覚・聴覚検査や医学的検査を行い、身体的原因や基礎疾患の除外も重要です。
診断は単なるラベル付けではなく、その後の支援計画に活かされます。同時に知的障害や自閉症スペクトラム障害など他の発達障害との重複や除外も考慮され、総合的評価が求められます。
7. 学習障害(LD)の子どもとの接し方
学習障害(LD)を持つ子どもとの関わりには、特性を理解し、安心感を与えることが欠かせません。親や教師が適切な接し方を身につけることで、子どもの自己肯定感を高め、学習意欲を引き出せます。ここでは、親としての心構え、教師・支援者の具体的サポート、そして子どもの長所を伸ばすポイントを紹介します。
親としての心構えと支援のヒント
学習障害の子どもは学習のつまずきに直面しやすく、自己肯定感が低くなりがちです。親は批判せず、努力や工夫を褒めることが大切です。小さな達成を認め、励ます言葉を積極的にかけて、子どもが「できる!」と感じられる環境をつくりましょう。また、子どもの困難を理解し専門家のサポートを積極的に活用する姿勢も必要です。家庭での学習時間は短めにし、集中できる工夫を心がけましょう。
教師・支援者としてできる具体的サポート例
教師や支援者は、子どもの特性に応じた学習方法や環境調整を行うことが重要です。例えば、指示は短く具体的にし、視覚教材を活用する、作業を細かく分けて進めるなどの工夫が有効です。評価方法の見直しや授業中の配慮(席替えや休憩時間の確保)も支援の一つ。学校のスクールカウンセラーや外部支援機関とも連携し、子どもの心理的な支えとなることも求められます。
長所や得意を伸ばす関わり方
学習障害の子どもは苦手な学習分野があっても、別の分野では優れた能力を持つことがあります。得意なことを伸ばす関わりを大切にし、成功体験を積ませることで自己肯定感や意欲を高めましょう。趣味や興味、運動、芸術活動など多様な分野での活躍を促し、子どものモチベーションを支えます。また、困難な部分は工夫やツールを活用して補い、負担を軽減しつつ成長をサポートしましょう。
8. 学校の先生への伝え方と学校現場での配慮例
学習障害(LD)のある子どもの支援には、学校と家庭、支援者がしっかり連携することが不可欠です。学校現場では子どもの特徴を正確に伝え、適切な配慮を要請することで、学習環境の負担を軽減できます。ここでは、連携のポイントや配慮の伝え方、具体的な学校での支援事例を紹介します。
学校との連携・情報共有のポイント
学校との連携は、定期的な情報交換と信頼関係の構築が基本です。保護者や支援者が子どもの学習状況や特性を正しく伝え、教師と共に課題や対応策を話し合うことが大切です。校内のカウンセラーや特別支援教育コーディネーターと連携し、学校全体で子どもを支える体制づくりも進めます。教師だけでなくスクールカウンセラーや外部支援機関も巻き込むことで、包括的なサポートが可能になります。
配慮事項の伝え方(配慮依頼書や面談活用など)
子どもの特性や困難を伝える際は、具体的でわかりやすい説明が重要です。配慮依頼書を作成し、子どもの困りごとと具体的な支援内容を明確に示します。また、面談や定期的な相談の機会を設け、情報の共有や子どもの様子の確認を行います。伝えるときはポジティブな視点で、子どもの長所や成長の可能性も伝え、学校との良好な関係を築くことがポイントです。
学校現場の具体的な配慮・支援事例
具体的な配慮例として、課題の分割提示や黒板への書き出しなど視覚的に理解を助ける工夫があります。ICTの活用や試験時間の延長、別室受験などの合理的配慮も効果的です。さらに、通級指導教室の利用や特別支援学級との連携で学習面だけでなく心理面の支援も充実しています。学校行事や授業参観への参加を通し、保護者・学校間の連携を深めることも支援の一環です。
9. まとめ
本記事では、学習障害(LD)の基本的な理解から、原因、症状、診断基準、支援の方法まで幅広く解説しました。
LDは知的発達に問題がないにもかかわらず、読み書きや計算など特定の学習に困難を抱える障害で、主に読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つのタイプに分かれます。
原因は主に先天的な脳機能の特性や遺伝的要素であり、環境要因や育て方だけでは説明できません。親や教師は子どもの長所を伸ばしつつ、具体的な配慮や支援を学校と連携して行うことが望ましく、情報共有や面談を活用したコミュニケーションも大切です。正しい理解と周囲のサポートが、子どもの学習意欲を支え、より良い成長に繋げることが重要です。
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