【気になる子への支援】発達特性を理解した学童での関わり方とは?

【気になる子への支援】発達特性を理解した学童での関わり方とは?

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 学童保育所の現場で日々こどもたちと関わっていると、「この子の行動、なんだか気になるな。どう関わるのが正解なんだろう」と感じる瞬間に、誰しも一度は出会うのではないでしょうか。
 なんだかいつも落ち着きがなく動き回っている子。何度説明してもルールが頭に入らず周囲とトラブルになってしまう子。学童支援員が声をかけると急に表情が強張ってうまくお喋りができない子…。
 忙しい時間帯や人手が足りない場面では、「どうしてこんなに大人を困らせるのだろう…」と感じてしまうことがあるかもしれません。注意をする回数が増え、気づけばその子の名前を呼ぶとき、いつも注意から入ってしまっている。そんな自分の行動を振り返って、あとから胸がチクッとすることもあるかもしれません。

 本コラムでは、学童保育所でよく目にする ”気になる子” の姿をいくつか挙げながら、発達特性という視点を通して、学童支援員としてできる関わり方のポイントを考えていきます。日々の支援方法に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。


① 「気になる子」ってどんな子?

 学童保育所は学校と比べると自由な活動時間が多いとはいえ、集団行動が求められる場面も多くあります。大人数のこどもたちが共に生活するために、おやつの時間や宿題の時間、帰りの会など、決められた流れの中で行動することはもちろん必要ですが、どうしてもそれらの枠に収まりきらないこどもたちが一定数存在し、その子たちがいわゆる「気になる子」と呼ばれています。

 たとえば、話を聞く場面でじっとしていられず、立ち歩いたり他の子に話しかけたりしてしまう子がいます。学童支援員としては、こども達全員にしっかり話を聞いてほしいという思いがあるからこそ「ちゃんと話を聞きなさい」と注意をすることが多いはずです。

 また、おもちゃの片付けや活動の切り替えが苦手な子もいます。「もう終わりだよ」と声をかけても、なかなか切り替えができず、結果的に次の活動時間に間に合わなかったり他の子に譲ってあげられなかったり…。周囲からは「あの子ってだらしないよね」や「わがままだよね」などと評価されてしまっているかもしれません。

 さらに、友だちや学童支援員との距離感が独特な子もいます。相手の反応に気づかず一方的に話し続けてしまったり、距離が近すぎて相手を驚かせ不快な思いをさせてしまったりすることで、トラブルになることもあります。好きあらば学童指導員の膝の上に乗ってきたり、おんぶや抱っこをせがんできたりと、過度に甘えてくるような子もいるかもしれません。

 こうしたこどもたちの行動は、決して大人を「困らせるため」ではなく(※)、その子が抱えている発達特性によるものである可能性があります。

(※)なかには、わざと大人が困るようなことをして大人の反応をうかがう「お試し行動」の場合もあります。お試し行動の目的は「この人はどこまで自分を受け止めてくれるのか?」や「自分は愛されているのか?」を確認するためといわれています。今回は発達特性に焦点を当てるため、「お試し行動」の対応方法は別コラムでご紹介します

②発達特性について理解しよう

 「発達特性」という言葉に対して、「難しくて専門的すぎる」「自分たちの管轄分野ではない」と距離を感じる学童支援員の方もいるかもしれません。たしかに、学童支援員は医師や専門家ではありませんので、気になる子に対して「あの子はこういう特性を持っているに違いない、だからこういう風に対応すべきだ」という診断をする行為は厳禁です。
 しかし、支援の選択肢を増やすために、そしてその子にとって適切ではない関わりを可能な限り避けるために、発達特性についての理解を深めておくことは非常に重要です。

 そもそも発達特性とは、人それぞれが持っている感じ方や考え方、行動の傾向の違い(偏り)を指します。ある子は音に敏感で、少しの物音でも気が散ってしまうかもしれません。別の子は、一つのことに強く集中する一方で、急な切り替えが苦手かもしれません。その他にも視覚・嗅覚・味覚・感触など、様々な感覚が敏感な子もいれば、忘れっぽかったりこだわりが強かったりする子もいます。
 こうした特性は誰にでも程度の差こそあれ存在していますが、それらの度合いが強く、日常生活に支障や困難が生じる場合に医学的な診断名がつくことがあるのです。

 代表的な発達特性の一つがASDと呼ばれる自閉スペクトラム症です。対人関係やコミュニケーションの独特さ、物事への強いこだわりなどが特徴です。
  また、ADHDと呼ばれる注意欠如・多動症と診断されるこどもも近年増えてきています。その名の通り、ADHDには注意力が散漫でうっかりミスや忘れ物が多くあったり、衝動性が強くじっとしていられない傾向があったりします。
 そのほか、LDと呼ばれる学習障害や、発達特性とよく似た行動が見られる愛着障害などのこどもたちもいます。

 大人数のこどもたちで集団生活をする学童保育所という場は、発達特性を持つこどもにとっては、無意識のうちに負担やストレスが積み重なる環境でもあります。その結果、イライラしたり、動き回ったり、癇癪を起こして感情を爆発させたり…といった行動が表に出やすくなることがあるのです。つまり、発達特性を持つこどもたちがとる「大人にとって困った行動」は、実は「こどもたち自身が困っている」というSOSなのです。

「皆のように上手くできない」のではなく、「その子にやり方が合っていない」だけかもしれない。
「怠けている」のではなく、「その子なりの考えがある」のかもしれない。

 そうした視点を持つことで、支援員の心持ちや関わり方は大きく変わってきますよね。「どうしてできないの?」という苛立ちに近い感情から、「どうすればこの子はできるようになるだろう?」というような冷静な考え方に変化することこそが、発達特性について理解することの意義です。

③ 発達特性を理解した具体的な関わり方とは?

 発達特性について理解した後は、実際それらの知識をこどもたちの支援にどのように活かしていくかを考えていく必要があります。同じ診断名を告げられているこどもたちであっても、一人ひとりの性格や発達度によって関わり方は大きく変わるため、「ASDだからこうすれば良い」や「ADHDだから仕方ない」といった大雑把な分類や決めつけはNG。以下に記載する関わり方のポイントも、あくまでも支援の指針の一つとして、捉えていただければ幸いです。

⑴先の見通しを立てて具体的に伝える。

 まず大切にしたいポイントの一つが、先の見通しを立ててあげることです。発達特性のある子の中には、次に何が起こるのかが分からないことで、不安や混乱が大きくなってしまう子が少なくありません。また、自分がやっている活動に夢中になるとなかなか次の行動への切り替えが難しい子もいます。学童保育所は学校のように時間割という決められたスケジュールが無いからこそ、発達特性のこどもたちにとっては混乱しやすい状況ともいえるのです。そのため、「あと10分でおやつだよ」や「この遊びが終わったら帰りの会だよ」など、終わりの時間や次の予定を具体的に伝えることで、こどもたちはグッと心の準備がしやすくなります。耳からの情報を処理しづらい子には口頭の声かけだけでなく、タイマーやスケジュール表などを併用することでより分かりやすく丁寧です。

⑵具体的な声かけや個別の声かけをする。

 次に意識したいのが、全体に向けた曖昧な指示だけで終わらせないことです。「そろそろ片付けて」や「もっと静かにして」といった全体指示は、多くの子にとっては問題なく理解できても、発達特性のある子にとっては「何を・どこまで・どうやって」行えば良いのかが分かりにくいことがあります。「この箱の中にブロックを全部入れよう」や「隣の人に聞こえるくらいの声で喋ってね」と、行動を具体的に分解して丁寧に伝えることが有効です。全体に向けた一斉指示だけでは行動に移せない子に対しては、個別の声かけをすることも重要になってきます。

⑶無理に集団行動を強制しない。

 三つ目のポイントは、学童だからこそできる個別伴走の支援を実施していくことです。学童保育所は、遊びや生活を通して一人ひとりのペースを大切にできる場所。何かの成績や点数を伸ばす必要が無い「ゆとりのある居場所」だからこそ、集団活動が苦手な子に対して無理に「みんなと同じ」を求めるのではなく、その子に合った関わり方を選択することも大切です。例えば、集団活動(イベントや帰りの会)への参加を本人の希望に応じて選べるようにしたり、離れて様子を見守るだけでもOKとしたりすることが考えられるでしょう。癇癪を起こしたり走り回ったりして、周囲とのトラブルが頻発する子には、加配スタッフがついて心と体の安全を確保することも検討できます。

⑷落ち着ける空間・環境を整える。

 そして最後に、こどもたちが気持ちを落ち着かせることができる遊びや空間を整えてあげることも欠かせません。刺激に敏感な子や感情の切り替えが難しい子にとって、にぎやかな学童の環境は疲れやすいものです。そんな時、静かに過ごせるスペースや、一人で集中できる遊びがあるだけで、気持ちを立て直すきっかけになります。パズルや折り紙、ブロックなど、その子が没頭できる好みの遊びを用意しておいたり、クールダウンできる場所(支援員の休憩室や静養室など)をあらかじめ整えておくことで「困った時でも大丈夫」という安心感がこどもたちの中に生まれます。最近では周囲の雑音を減少させてくれるヘッドホンを着用をする子も増えてきていますが、これは決して特別な配慮ではありません。視力が低い子がメガネをするのと同じように、その子が過ごしやすいような適切なツールを使っていくことが当たり前になるような環境作りを進めていけると良いでしょう。

④ 1人で抱え込まない支援体制をつくる

 ここまで「気になる子」への対応についてまとめてきましたが、「発達特性を持つこどもの困りごと」というのは学童支援員個人の力だけで到底解決できるものではありません。むしろ自分だけで対応しようとすればするほど疲弊してしまいますし、こどもたちのためにもなりませんので、1人で抱え込まない支援体制作りが重要になってきます。

 まず大切なのは、職場の仲間と気づきや見立てを共有することです。「最近こんな様子が見られるんだよね」や「こんな関わり方を試してみた」というように話し合いをしていくことで、自分では気がつかなかった新たな視点が得られることがあります。複数の大人でこどもたちを見守ることで、偏った見方を防ぐことにもつながります。

 保護者や学校の先生との連携も重要です。学童保育所での様子が、必ずしも家や学校での姿と一致するとは限りません。学校では気を張って頑張っているけれど学度保育所では一気に解放されたように感情が昂ってしまう子、家では家族と穏やかに過ごしているけれど学童保育所では友達とのトラブルが絶えない子などもいます。だからこそ、学童保育所での様子を丁寧に情報共有し、家庭や学校での様子を教えてもらうことで、ようやくその子の全体像が見えてきます。

 さらに、発達特性を持つ子に関しては外部機関との連携も欠かせません。その子が通所している放課後等デイサービスやかりつけの小児科医などと情報共有をしながら(個人情報に関わるため、保護者に確認はとりましょう)、専門的な視点を取り入れていくことが出来ると支援の幅が広がります。「学童保育所で起きている困りごとは学童保育所だけで何とかしなければならない」と思い込まないことが、こどもにとっても学童支援員にとっても非常に大切です。


おわりに

 学童保育所で「気になる子」と感じるこどもはもしかすると、”皆と同じ”を求められる窮屈さや上手く出来ないもどかしさ、自分の想いが伝わらない辛さや叱られ続ける苦しさ…それらの感情を抱えながら、毎日を過ごしている子かもしれません。
 だからこそ、簡単に「ワガママな子」や「困った子」として処理するのではなく、その背景にある困り感に目を向けることが、適切であたたかい支援の第一歩になります。学童支援員がすべてを背負う必要はありません。仲間と相談し、保護者や学校、外部機関とも連携しながら、チームで子どもを支えていくことが、結果的にこどもたちの健やかな成長に繋がっていくのです。
 発達特性についての知識を増やしつつ、目の前にいるこどもたち一人ひとりの行動をよく観察し、より良い関わり方や支援方法についてじっくりと考えていきましょう。

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